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男性に導かれるまま、私は扉の奥へと足を踏み入れる。
そこには、色とりどりの無数のトルコランプが天井から下がった、華やかでいて、どこか少しだけ猥雑にも感じる不思議な空間が存在していた。
(あのお店の奥に、こんな部屋があったなんて……。まるで、御伽噺に出てくる魔法使いの隠れ家みたいね)
少しだけ童心に帰った様な気持ちで、部屋をキョロキョロと眺める私。
すると、背後から不意に声がかけられる。
「初めまして。私のお部屋にようこそ」
その声に驚き、私が慌てて振り返るとーーそこには、人形の様に美しい少女が立っていた。
「私の名前は、アン。アン=ルゥリィ。貴女は?」
少女が小さく小首を傾げると、透ける様なミントカラーの長い髪もさらさら揺れる。
「私は真由。長田真由よ」
少女ーーアンの美しさに気圧された自分を悟られない様、私は努めて強い口調でそう名乗った。
「マユ……素敵な名前ね。逢えて嬉しいわ」
けれど、アンは全く気にした様子はなく、ふわりと私に微笑みかける。
毒気を抜かれる、とはまさにこのことだろう。
「私の部屋には中々お客様が来てくれないから、とても退屈していたの」
そう言って無邪気に微笑みながら、アンは私の両手を握ると、自分の隣に座らせる。
「ねぇ、聞かせて?外の世界のーー貴女の心の奥底に秘めた、その物語を」
アンの黒曜石の様な瞳に見つめられた瞬間、私は堰を切った様に今までの不満や恨み辛み……その全てをぶちまけていた。
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