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瞬間、目の前に溢れる眩しい光。
私は思わず、ぎゅっと目を瞑る。
そうして、ゆっくり目を開けてみるとーー私は全く知らない場所に立っていた。
見たところ、中世位のヨーロッパに雰囲気がよく似ている。
「随分リアルに作り込んであるわねぇ」
こういう世界観は、正直言って嫌いではない。
取り敢えず、此処がどんな世界か知る為に、私は散歩をしてみることにした。
と、通りの向こう側から、数人の男性達が走ってこちらに向かって来る。
彼らは口々に何かを言っている様だ。
よく耳を澄ませてみるとーー
「見つけましたよ、聖女様!」
「勝手に外出しないでくださいとあれ程言ったではないですか!」
成る程、彼らは『聖女』と呼ばれる人物を探していたらしい。
(聖女様、か。異世界モノの典型ね)
そんなことを考えながら、辺りを見回してみる私。
聖女様とやらが一体どんな姿をしているのか、見てやろうと思ったのだ。
すると、聖女を探している男性達の内の1人がこちらに近付いて来る。
そして、私の手を取り、こう告げた。
「全く……。探しましたよ?聖女様」
(えっ?)
再度周囲を見回す私。
だが、周囲には生憎、聖女と呼ばれる様な女性の姿はない。
と、先程の男性が真っ直ぐに私を見つめたまま、訝しげに首を傾げる。
「先程から、一体どうされたのです?聖女様」
その言葉と視線に嘘偽りはない様で。
と、いうことはーー。
「えぇぇ?!」
(まさか、私が聖女様なの?!)
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