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それからの、この世界での生活はとても素晴らしいものだった。
誰もが私を崇め、敬う。
まさに、私の理想の世界そのものだった。
どんな権力者も私の言うことを聞き、命令した通りの行動をする。
この世界では、財宝も土地も何もかも、私に手に入らないものはなかった。
そう、男ですらも。
ここでは、私は神同然だったのだ。
誰もが私にひれ伏し、私の寵愛を欲しがった。
ニコラという、あの騎士団長以外は。
不思議なことに、何故かあの騎士団長だけは、思い通りにならなかったのだ。
それどころか、私が男達を王宮に招いて宴を開いていると、叱責してくるのである。
(これは、あってはいけないことよね)
だって、私は聖女様なのだから。
何をしても許される、特別な存在なのだから。
だから、私はこの国で一番の魔法使いである男性を頼ることにした。
ニコラを、自分のモノにする為に。
魔法使いの説得は、とても簡単だった。
涙で潤んだ瞳で彼を見つめ、瞬きを一つ。
大きな瞳から一筋涙を溢してみせれば、男は勝手に私を心配し、何でもしてくれる。
私の涙を止める為に。
(ああ、なんてイージーモードな人生なのかしら)
きっと、これが本当の、私の生きるべき人生なんだわ。
この世界は私の為にあるのよ。
「なんて素晴らしい世界なの!」
私がそうこの世界の全てに酔いしれた、次の瞬間……私の頭の中で、まるで目覚まし時計のアラームの様な機械音が鳴り響いた。
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