case1 長田 真由の場合

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しかし、私の熱い思いとは裏腹に、アンの答えは冷たいものだった。 「ごめんね、マユ。それは聞いてあげられないの。あの国に連れて行ってあげられるのは、1人1回だけだから」 「そんな!」 突きつけられた答えに、絶望し、言葉を失くす私。 (あんな夢を見せておいて、2度目はありませんだなんて!) 「そんなのってないわ!」 気付くと私は、悲鳴に近い声をあげていた。 確かに、あの世界は現実ではないのだろう。 時間だって、現実の世界にしたら、約1時間居ただけだ。 それでも、あの場所こそが、私にとっては本物の世界だったのである。 「お願い、アン。私をあの世界に返して。あの場所が、私の本当に居るべき場所なのよ!皆が私の帰りを待っているの!」 それに、漸くあの男が手に入るというのに! (こんな所で諦められないわ!) と、私の哀願を聞いていたアンが、ふとその表情を緩めた。 そうして、私の頭を撫でながら柔らかな声で語りかける。 「仕方ないなぁ。マユだから『特別』だよ?」 (『私』だから、『特別』!) と、いうことは……? 「マユは『選ばれた』、とっても『特別』な人だから。これからも、あの世界に連れて行ってあげる。でもね、その代わり、1つだけ条件があるの」
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