27人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
しかし、私の熱い思いとは裏腹に、アンの答えは冷たいものだった。
「ごめんね、マユ。それは聞いてあげられないの。あの国に連れて行ってあげられるのは、1人1回だけだから」
「そんな!」
突きつけられた答えに、絶望し、言葉を失くす私。
(あんな夢を見せておいて、2度目はありませんだなんて!)
「そんなのってないわ!」
気付くと私は、悲鳴に近い声をあげていた。
確かに、あの世界は現実ではないのだろう。
時間だって、現実の世界にしたら、約1時間居ただけだ。
それでも、あの場所こそが、私にとっては本物の世界だったのである。
「お願い、アン。私をあの世界に返して。あの場所が、私の本当に居るべき場所なのよ!皆が私の帰りを待っているの!」
それに、漸くあの男が手に入るというのに!
(こんな所で諦められないわ!)
と、私の哀願を聞いていたアンが、ふとその表情を緩めた。
そうして、私の頭を撫でながら柔らかな声で語りかける。
「仕方ないなぁ。マユだから『特別』だよ?」
(『私』だから、『特別』!)
と、いうことは……?
「マユは『選ばれた』、とっても『特別』な人だから。これからも、あの世界に連れて行ってあげる。でもね、その代わり、1つだけ条件があるの」
最初のコメントを投稿しよう!