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アンが提示した条件ーーそれは『あの世界に行くのは1日1度、2時間までにすること』というものだった。
だが、それでも構わない。
私にとって大切なのは、あの世界に戻れることなのだから。
(嬉しい!私、またあの世界に帰ることが出来るのね!)
その日から、すっかり金鎖亭に入り浸る様になった私。
午前中は無心に仕事をこなし、夜は金鎖亭で『聖女としての私』を生きるーーそんな毎日を送っていた。
けれど、そんな日々の中、私はいつしか、ある感情を感じる様になっていく。
抑えきれないこの気持ち、これは……。
(足りない!!)
あの世界で過ごす時間が圧倒的に足りないという強い不満だった。
私の中ではもはや、現実世界で生きる時間は、あの世界で過ごす時間のおまけ程度に成り下がっていたのだ。
(もっとあの世界で過ごしたい!それでも、アンとは約束してしまったし……)
約束を破ってしまった時のアンの悲しげな表情を想像し、少しだけ冷静になる私。
けれど、その日から、1度抱いてしまった不満はそう簡単には消えることなくーー私は、常に足りない不満を抱え続けることになったのだった。
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