case1 長田 真由の場合

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アンに手を引かれて向かった先ーーそこは、いつも私が入り浸っている部屋の、突き当たりの壁の目の前だった。 (何で、こんな所に?) 私が疑問を込めてアンを見つめると、彼女は平時と変わらぬ穏やかな笑みを浮かべる。 その微笑みは、大丈夫、と告げているかの様だ。 そして、彼女は徐に、壁全体にかかっていた白いレースを捲りあげる。 「普段は、絶対に誰も通さないんだよ?」 そこには、大きくスノードロップが彫り込まれた、美しい木の扉があった。 今までの扉と同じ作者の作品だろうか。 まるで、扉に本当にスノードロップが咲いているかの様だ。 私が彫刻のあまりの見事さに見入っていると、軽くアンから手を引かれる。 「マユ、こっち」 アンについて部屋の中に入っていく私。 「わ……」 その部屋に1歩踏み込んだ私は、思わず息を飲んだ。 (いつもの部屋も綺麗だけれど、この部屋もなんて美しいの) 数々の豪奢な調度品で彩られた部屋。 そこは、中世ヨーロッパの王族の寝室といった雰囲気だった。 部屋の中央にある、シルクの天蓋で覆われた場所には、きっとベッドがあるのだろう。 すると、アンが一気に天蓋を引き開けた。 「これ、は……?」 天蓋の中にあった意外なものに声を失う私。 そこにあったのは、酸素カプセルによく似た大きなマシンだった。
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