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アンに手を引かれて向かった先ーーそこは、いつも私が入り浸っている部屋の、突き当たりの壁の目の前だった。
(何で、こんな所に?)
私が疑問を込めてアンを見つめると、彼女は平時と変わらぬ穏やかな笑みを浮かべる。
その微笑みは、大丈夫、と告げているかの様だ。
そして、彼女は徐に、壁全体にかかっていた白いレースを捲りあげる。
「普段は、絶対に誰も通さないんだよ?」
そこには、大きくスノードロップが彫り込まれた、美しい木の扉があった。
今までの扉と同じ作者の作品だろうか。
まるで、扉に本当にスノードロップが咲いているかの様だ。
私が彫刻のあまりの見事さに見入っていると、軽くアンから手を引かれる。
「マユ、こっち」
アンについて部屋の中に入っていく私。
「わ……」
その部屋に1歩踏み込んだ私は、思わず息を飲んだ。
(いつもの部屋も綺麗だけれど、この部屋もなんて美しいの)
数々の豪奢な調度品で彩られた部屋。
そこは、中世ヨーロッパの王族の寝室といった雰囲気だった。
部屋の中央にある、シルクの天蓋で覆われた場所には、きっとベッドがあるのだろう。
すると、アンが一気に天蓋を引き開けた。
「これ、は……?」
天蓋の中にあった意外なものに声を失う私。
そこにあったのは、酸素カプセルによく似た大きなマシンだった。
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