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「これを使うとね、マユは長くあっちの世界にいられるんだよ」
慣れた手付きでマシンの横のボタンを操作しながら、説明するアン。
私は思わずマシンの中を覗き込む。
けれど、中は至って普通の酸素カプセルそのものだった。
ただ1つだけ違っていたのは、頭を置く部分に枕ではなく大きなヘッドセットが置いてあることだ。
しかも、そのヘッドセットもまた、大きな水晶玉と管で繋がっている。
(このヘッドセットと繋がっている水晶は、今までの部屋で見ていた水晶と同じ物なのかしら?)
と、カプセルの入り口のスライドドアを開け、私に中に入る様促すアン。
(これに入れば……長くあちらの世界に浸っていられる。誰もが私を大切にしてくれる、あの夢の様な世界に)
私の心は、すっかり甘い誘惑の鎖に搦め捕られていた。
が、いざカプセルに入ろうとした時ーー首から外し忘れていた社員証が目に入る。
そこで、私はハッとした。
(長い時間って、一体どれ位なのかしら)
あの世界に長く居られるのは嬉しい。
けれど、その間のことは一体どうするのだろう?
職場だって、確かに働きにくい場所ではあるが、私が何日も無断欠勤をしたら、流石に心配をするだろう。
警察や親に相談されたりするかもしれない。
それに、そもそもうちの会社は厳しいのだ。
長期無断欠勤をした私はクビ、なんてことも充分に有り得る。
(そんなことになったら、お給料が貰えないじゃない。お金が無ければ、此処にも通えないわ!)
心の中でじわりじわりと募っていく不安に、焦りを隠せなくなる私。
私は思わず、目の前のアンに全ての不安をぶつけてみた。
「ねぇ、アン?長くあちらに行けるのは、嬉しいわ。でも、その間は一体どうするの?私の仕事は?私が行かなきゃ、きっと皆心配するわ。職場から家族に連絡が行ったら、私は連れ戻されてしまうかも。ねぇ、アン?どうするつもりなの?」
すると、私の不安を一通り聞き終わったアンは、不敵に微笑んだ。
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