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「ああ、やっぱりこの世界は素晴らしいわ!」
異世界に着いた瞬間、まるで私が来るのを待ちわびていたかの様に用意された、派手な出迎えと歓迎の宴に、私は心の底から酔いしれた。
(この世界の住人達は、私の本当の価値が分かっているのね)
そうよ……私は、こうして誰かの上に立ち、崇められるべき特別な存在なの。
あんな狭苦しいオフィスにいるべき存在ではないのよ。
手近に男達を侍らせ、キスの雨を受けながらワインを流し込む私。
そんな私を、ニコラは、終始何か言いたげな目で見つめていた。
きっと、得意のお説教をしたくて堪らないのだろう。
私のことを憐れんでいる様な、嫌な目だ。
(憎らしい男)
けれど、それも後少しのこと。
儀式さえ終わってしまえば、ニコラの心は私のものだ。
もう、五月蝿いことは言わせやしない。
そうだ、私に言いなりの奴隷にしてしまおう。
(ふふ、楽しみだわ)
上機嫌でフルーツの盛り合わせに手をつける私。
彼が将来的に自分のモノになるのだ、と思える様になってからは、ニコラのあの視線も私は全く気にならなくなっていた。
と、そんな私の元に、珍しくニコラが進み出て来る。
(一体どういう風の吹き回しかしら?)
訝しげに彼を見つめる私。
すると、彼は深く一礼をしてから、口を開いた。
「聖女様?……聖女様は、『聖女としての役割』を、どの様なものだとお考えになりますか?」
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