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(は?この男は誰に物を言っているの?)
今更私にそんなことを聞くなんて。
きっと、この男は心底私のことを馬鹿にしているのね。
込み上げる怒りが抑えられなくなった私は、手元のワイングラスを掴むと、そのままニコラの顔に中身をぶちまける。
「聖女としての役割?そんな物、決まっているじゃない!それは、『存在すること』よ!私は存在するだけで、人々を幸せにしてあげられるの!これ以上の役割なんてあると思う?」
すると、私の言葉を聞き、何故だか一瞬悲しげな表情を浮かべるニコラ。
けれど、彼は直ぐに何時もの仏頂面に戻ると、
「……失礼しました」
小さくそう呟いて、その場を後にした。
(何かしら、今の質問は。本当に無礼な男ね)
「折角のワインが駄目になってしまったじゃない。全く。飲み直すわよ!もっと沢山ワインを持ってきて頂戴!それに、フルーツと料理……ああ、後は近くの村から若くてイイ男を連れてきて」
あの男に悪くされた空気の責任は、他の男に取って貰うとしよう。
ニコラだって、この世界の人間なのだから。
そう、連帯責任だ。
ねっとりと自らの唇を舐め、昏くほくそ笑む私。
この日から、ニコラが私に無意味な忠言をして来る事は一切無くなった。
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