case1 長田 真由の場合

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(は?この男は誰に物を言っているの?) 今更私にそんなことを聞くなんて。 きっと、この男は心底私のことを馬鹿にしているのね。 込み上げる怒りが抑えられなくなった私は、手元のワイングラスを掴むと、そのままニコラの顔に中身をぶちまける。 「聖女としての役割?そんな物、決まっているじゃない!それは、『存在すること』よ!私は存在するだけで、人々を幸せにしてあげられるの!これ以上の役割なんてあると思う?」 すると、私の言葉を聞き、何故だか一瞬悲しげな表情を浮かべるニコラ。 けれど、彼は直ぐに何時もの仏頂面に戻ると、 「……失礼しました」 小さくそう呟いて、その場を後にした。 (何かしら、今の質問は。本当に無礼な男ね) 「折角のワインが駄目になってしまったじゃない。全く。飲み直すわよ!もっと沢山ワインを持ってきて頂戴!それに、フルーツと料理……ああ、後は近くの村から若くてイイ男を連れてきて」 あの男に悪くされた空気の責任は、他の男に取って貰うとしよう。 ニコラだって、この世界の人間なのだから。 そう、連帯責任だ。 ねっとりと自らの唇を舐め、昏くほくそ笑む私。 この日から、ニコラが私に無意味な忠言をして来る事は一切無くなった。
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