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その後、職場から離れたカフェでリラと落ち合う私とアン。
職場から離れた場所にしたのは勿論、同僚達に私とリラが一緒に居るところを見られない様にする為だ。
「とっても素敵で楽しい体験を、本当にありがとうございます!マユさん!」
開口一番、弾けんばかりの笑顔で私にそう告げるリラ。
(素敵?あんな場所の何処が?)
私の頭には当然の様にそんな疑問が浮かんで来るが、リラの眩しい笑顔に圧され、言葉にするのはぐっと堪えた。
「気に入って貰えたみたいで良かったわ」
代わりに、出来うる最高の笑顔で彼女に微笑み返す私。
そんな私に、リラは無邪気に何度も頷いた。
「私、今まで外に出た事がなくて……。だから、沢山の人と触れ合えて、色々な事が学べる『今』が最高に幸せなのです!」
そう言って、リラは何度も私にお礼の言葉を告げる。
(大袈裟ねぇ。利用されてるっていうのが分からないのかしら?そう言えば、今外に出たことがないって言ってたし……相当世間知らずなのかも。だとしたら、好い鴨ね!)
思わず口元に浮かびそうになる悪い笑みを、ナプキンで口元を拭くふりをして隠す私。
そうして、私は、リラの両手を優しく包み込む様に握ると、精一杯人の好い笑顔を浮かべ、こう告げた。
「貴女が私の職場を気に入ってくれて、とっても嬉しいわ。それに、貴女が幸せなことも。貴女のお役に立てて、こんなに嬉しいことってないわ。だから……ねぇ、リラ?突然だし、直ぐにで悪いけれど、明日からもまた、私の代わりに此処で働いてくれないかしら?私、向こうで、どうしても守らなければいけない約束をしてしまったのよ。私が行かなければ、きっと相手を悲しませてしまうわ。貴女なら、わかってくれるでしょう?私を助けて欲しいのよ。お願い、リラ」
リラは、呆気ない位素直にーー簡単に、私の言葉に頷いた。
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