case1 長田 真由の場合

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「お会い出来るのを心より楽しみにしておりました、美しく気高き聖女様」 次に目を覚ました時、私が立っていたのは、顔合わせを予定した薔薇園だった。 勿論、目の前に居るのは私の伴侶となる王子である。 (この装置の良い所は、やっぱり、前回アラームが鳴った直後の場面に戻れることよね) お陰で、私が急に消えても誰も怪しまないし、私の正体を疑りもしない。 現に、この美しい王子だって、まさかこの出逢いが2度目だなんて思わずに、前回と変わらず手を差し出して来る始末だ。 (映像とは言え、本当に怖い位上手く行きすぎな人生よね) まぁ、それはこの『私』なんだから当然なのだけど。 しかし、そんな様子は一切おくびには出さず、私は優雅に微笑み返すと王子の手を取った。 「ありがとうございます。私もですわ、素敵な王子様」 私が王子の手に優しく触れ、そう告げた瞬間ーー彼の顔にとても嬉しそうな笑みが広がっていくのが分かる。 (何て分かりやすい王子だろう。でも良いわ。その方が扱い易いし。この王子も、これで私の言いなりね) でもまぁ、念には念をと言うし。よし。 その後の薔薇園での散策中、私は偶然小石に躓いた風を装うと、王子の方へとよろめき、彼の腕にそっと自慢の胸を押し当てる。 そうして、動揺した王子と目が合った瞬間ーー駄目押しのキス、だ。 この世界で、これで落ちなかった男はいない。 案の定、王子も顔を真っ赤にし、息を荒くして私を見ている。 こうなれば、もう、後はこっちのものだ。 恥じらう素振りを見せながらも、王子を寝室へと誘う私。 この日、私は王子と結ばれ、正式に隣国の次期王妃となった。
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