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「お会い出来るのを心より楽しみにしておりました、美しく気高き聖女様」
次に目を覚ました時、私が立っていたのは、顔合わせを予定した薔薇園だった。
勿論、目の前に居るのは私の伴侶となる王子である。
(この装置の良い所は、やっぱり、前回アラームが鳴った直後の場面に戻れることよね)
お陰で、私が急に消えても誰も怪しまないし、私の正体を疑りもしない。
現に、この美しい王子だって、まさかこの出逢いが2度目だなんて思わずに、前回と変わらず手を差し出して来る始末だ。
(映像とは言え、本当に怖い位上手く行きすぎな人生よね)
まぁ、それはこの『私』なんだから当然なのだけど。
しかし、そんな様子は一切おくびには出さず、私は優雅に微笑み返すと王子の手を取った。
「ありがとうございます。私もですわ、素敵な王子様」
私が王子の手に優しく触れ、そう告げた瞬間ーー彼の顔にとても嬉しそうな笑みが広がっていくのが分かる。
(何て分かりやすい王子だろう。でも良いわ。その方が扱い易いし。この王子も、これで私の言いなりね)
でもまぁ、念には念をと言うし。よし。
その後の薔薇園での散策中、私は偶然小石に躓いた風を装うと、王子の方へとよろめき、彼の腕にそっと自慢の胸を押し当てる。
そうして、動揺した王子と目が合った瞬間ーー駄目押しのキス、だ。
この世界で、これで落ちなかった男はいない。
案の定、王子も顔を真っ赤にし、息を荒くして私を見ている。
こうなれば、もう、後はこっちのものだ。
恥じらう素振りを見せながらも、王子を寝室へと誘う私。
この日、私は王子と結ばれ、正式に隣国の次期王妃となった。
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