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その日から、今まで以上の富も栄光も……望む殆どを手にし、楽園の様な生活を送る私。
日々、権力を貪り、快楽を貪り、自由気ままで淫蕩に耽る暮らしを送って来た。
そんな日が何日も続いたある日の夕刻、例の魔法使いからの使者がやって来る。
(ああ……今日がいよいよ、儀式の日なのね!でも、それにしては少し早い様な。事前の準備とかかしら?)
遂にあの男がーー欲しかったモノがやっと手に入る!
期待に胸を踊らせながら、馬車に揺られ、国の外れにある儀式の場……大きな山の中腹を訪れる私。
使者に促され、私が馬車を降りると、其処には大きな石造りの祭壇の様な物が用意されていた。
周囲には漆黒のローブを着た沢山の人々。
と、その中の1人が徐に何かを差し出して来る。
見ると、それは美しい純白のドレスだった。
(成る程、ここで結婚式までしてしまおうという事ね)
喜んで受け取ると、手早く岩影で着替えて来る私。
そうして、私が岩影から姿を現すと、
『聖女様万歳!』
その場に居た人々が一斉にそう叫び始めたのだ。
(何事?)
『聖女様に感謝を!』
(感謝にしたって、ちょっとやり過ぎじゃない?)
流石に動揺した私が周囲を見回すと、先ほどドレスを差し出してきた人物とは、別のローブの人物が此方に向かって来るのが見える。
(誰かしら?)
その人物は、私の目の前に立つと、ゆっくりフードを降ろした。
その下の顔はーー
「王子様?!」
夫である王子だった。
(何故彼がここに?!)
私が目を見張った瞬間、胸に走る熱い痛み。
恐る恐る、私が視線を下に向けると……私の胸に深々と突き刺さる銀の短剣の姿があった。
「な、んで……?」
それは私の急所を貫いていたのか、訳も分からぬまま膝から崩れ落ちる私。
(嘘でしょ……?映像の中の筈なのに、何で本当に痛みがあるの?!)
私はそのまま祭壇まで運ばれると、そこに恭しく横たえられる。
胸から血を大量に垂れ流したまま、周りを見渡す私。
すると、ローブの人物達が私を囲んできたではないか。
皆、手には銀の短剣を持っている。
『我が国と隣国に起こる全ての厄災を肩代わりしてくださり、ありがとうございます。聖女様』
笑顔を浮かべ、そう告げると、銀の短剣を大きく振り上げるローブの人物達。
(な、何をする気なの……?!い、いや……!!止めてぇぇぇ!!!)
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