梅雨も上がれば

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 猫と人とは生きる早さが違う。私は確かに人の年数でいえばさほど生きてはいないが、猫としては長生きである。 「先生は私と同じくらい年寄りだろう。年寄りはそっと生きるものだ。猫でも知ってることをなぜ先生はわからん」  人の年齢で換算すれば先生より年寄りであるらしい。だから先生は私に敬意を払う。猫殿と呼ぶ。 「検査にいってきますよ、猫殿」  弱々しく先生が言った。立ち上がると、その細い体は、以前よりやつれた気がする。  寝間着代わりの着物から、見える胸板が薄く儚い。 「検査とやらの答えはいつわかるのだ」 「さて一週間程度ですかね」  こんこんと咳をして、先生は杖を手に取る。  病院とやらに猫はつれていけぬ。私は一人、いや一匹で六畳一間に取り残された。  女の霊も共にある。彼女は心配げな顔で私をみる。じっと見つめられると不安が伝染するようだ。 「見ておらず治せばいいのに、座って居るだけとは」  霊に向かっていくら説教しても、女は寂しげに首を振るばかり。私はひどく苛々してしまい、窓にひょいと飛び乗る。  窓は私がいつでも外に出られるように、開けられているのが常だった。
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