桜の散策路

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 先生の目には私の知らない過去が見えているらしい。 「大切な。大切な話です。なぜ忘れていたのか」  先生がメモ帳に、ぐちゃぐちゃと何かをかきこむ。その手に、先生の見えない影がさした。  気がつけば、あの女が先生の手元を覗き込んでいる。私に軽く会釈をして、見たこともない優しい笑みを浮かべている。  彼女は古い屋敷の奥を見つめた。それは先生と同じ目の色だ。  どこまでも優しい瞳の色だ。
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