寄り道

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 ラピスはその日、眠れずにずっと考え込んでいた。いけないと言われていることをしてみろというアンバーの気持ちがわからない。もんもんと考え込んだ結果、ラピスは初めて寝坊した。学校に遅刻したラピスは泣きそうになりながら先生に頭を下げる。  「そんな日もありますよ。次から気を付けてくださいね」  さらっと言われ、強く怒られなくて良かった気持ちと、そんなに軽く済んで良かったのかという不安でラピスは落ち着かない気分になった。  「ラピスでも寝坊することあるんだね」  「そりゃそうでしょ、人間なんだし」  「そうだけど、ちょっと安心したっていうか」  「まぁ、わかる」  友達の反応を聞いてもっとラピスはわからなくなった。悪いことをしたはずなのに、むしろ温かい笑顔を向けてもらえるなんて。ラピスは尊敬される大人になりたいと思っている。だから失敗しないように、悪いことをしないようにずっと気を付けてきた。  「大人になるって、なんなんだろう……?」  寝不足でぼんやりしていたらぽろりと言葉が漏れていたらしい。友達がきょとんとしていてラピスは慌てた。友達はバカにすることなく一緒に考え出した。  「体は放っておいても大きくなるけどな」  「んー、自分で健康管理できるようになれば大人?」  「兄ちゃんが言っていたけど、良い子を自分の意志で止めるのが1歩とか、これでいいのかって思った時が始まりとか……言ってたなー」  「難しいな」  「先生に聞いたことあるんだけど、失敗は成功のもとって」  「? 失敗はしない方がいいんじゃないの?」  「えぇ、無理でしょ。失敗からしか学べないことがあるのよ、ラピス」  「そうよ、ラピス。たとえば、今日の遅刻。眠れなかった原因があるわけでしょ? どういう風になると眠れなくなるか、どうすれば眠れるかって考えられるでしょ。あとは、寝不足な人がいたら心配できるじゃない」  ラピスは目をぱちくり。自分じゃ考えたことのない考えがいっぱいだった。だとすれば、アンバーの言葉もすごいアドバイスかも知れない。
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