寄り道

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 演奏を披露していた2人を拍手で見送った時には日が暮れ始めていた。ラピスは大変だ! と急に人気がなくなった公園を見渡してほぅと思わず息を吐いた。赤と青が混ざった空に輝く一番星。公園の街灯にも電気が点き始めて光が当たった場所だけ浮き上がる木々が美しい。ラピスはいつも同じ時間にまっすぐ帰っていたからこんな時間に外にいたことがない。こんなに綺麗な世界があったのかと立ち尽くす。  「こんな時間に外にいるのは危ないよ」  「!」  いきなり声をかけられてラピスは飛び上がって驚いた。振り返ると街の警備係の制服を着た男の人が心配そうな顔をして立っている。  「ご、ごめんなさい! すぐに帰ります!」  頭を下げて走り出し、すぐにラピスは立ち止った。初めて入った公園で、音楽に惹かれて移動したから道がよくわからなくなっていたのだ。しかも暗くなってきているから尚のこと。  「えっと、もしかして迷子かな?」  「…………はい」  ラピスは半べそで振り向いて頷いた。警備係の人は安心させるように笑って手を繋いでくれた。ラピスはちゃんと自分の家の住所を言えたからとても褒められた。思ったより遠くに行ってはいなかったらしい。数分で家に辿り着いた。家の前には心配した両親や使用人がいて警備係の人にみんなでお礼を言った後、ラピスはしっかり怒られた。
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