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「兄上」
廊下で声をかけられて振り向いた。怒られて泣いたばかりのラピスの赤い顔を見てアンバーはポンポンと頭に手を置いて先を促した。何か言いたそうな顔をしていたからだ。
「寝坊も寄り道もいけないことです。でも、たまにはいいのかもしれません。友達は寝坊した私を見て安心したみたいです。それに、寄り道は楽しかったです。帰りが遅くなったのは失敗だったけど綺麗なお花と素敵な音楽を聴けました。警備係の人は優しくて格好良かったです」
「ふぅん、たくさんのものを見れたようだな、ラピス」
「はい、兄上」
「今宵はしっかり眠るといい」
「おやすみなさい、兄上」
「ああ、おやすみ、ラピス」
生真面目に頭を下げて自室に戻っていく足音が不意に止まる。肩越しに振り返るとラピスは少し悔しそうにうれしそうに微笑っていた。
「アンバー兄上、兄上はもう少し真面目でもいいと思います。だけど、格好良いです」
意表を突かれて言葉をなくしたアンバーがうれしそうに笑みを浮かべる頃にはラピスは自分のベッドに飛び込んで毛布を引っかぶっていた。
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