【第一部】正すべき世界

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 十六年前。この国では、「Lunacy」(月による間欠性精神病)というものがあり、人々に恐れられていた。  満月の夜になると狂い出し、人を無差別に襲う。そしてその襲い方が、爪や歯で引きちぎって他人を殺そうとするため、Lunacy患者のことをWolfと呼んだ。  この精神病になる理由は解明されていないが、Lunacy患者に効く薬が開発された。  精神病に効く成分が発見されたのは、月下美人に似た、魅月花(みげつか)という植物からだった。魅月花から取れる成分、「ミゲイツ」がLunacy患者に効果があったのだ。  しかし、その開発途中だったミゲイツを含む薬と魅月花が、開発した研究員の手によって全て持ち出されてしまったのだ。そして開発者の桐山修伍(きりやましゅうご)は行方不明となっている。  桐山が公開していた魅月花の情報は偽のもので、残された研究員は誰も魅月花を栽培することができなかった。                  *
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