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【第一部】狂わされた計画
御影がクリエーションに潜入してから三週間後、無事鏑木も潜入に成功した。
「たまたまペアになるなんて思いませんでした。手をまわしたんですか?」
「まさか! 俺だって最下級構成員なんだから、そんなことできるわけないだろ」
クリエーション内では、構成員はペアで行動することになっていた。鏑木のペアはなんと御影だったのだ。
「だとしたらすごい偶然ですね」
「クリエーションはマトリと同レベルで人員不足みたいだし、それも影響したんだろうな」
普通新人は、ある程度経験のある構成員と組まされる。だがクリエーションは人手不足の結果、潜入して一ヶ月にも満たない御影を、鏑木と組ませることにしたらしい。
それでも新人を任せられるだけの信頼を、既に御影が組織内で得ていることに鏑木は関心していた。
「さっき顔合わせの時も言ったが、俺は時雨だ。お前は温海だよな?」
「はい」
二人はクリエーション内で、あらかじめ決めておいた偽名を名乗っている。
「顔引き攣ってるぞ」
「え」
鏑木は、店のガラスのドアに映った自分の顔を見た。無表情のつもりだったし、改めて見てみても無表情に見える。
「はは、そうやって動揺しちゃダメだろ」
「試したんですか?」
「俺には引き攣っているように見えたんだよ」
御影は可笑そうに笑った。半分くらいは揶揄われているようだ。
「もしこの作戦が失敗したらと思うと…」
「失敗したらじゃなくて成功させるんだよ」
御影は間髪を容れずにそう言った。その瞳は黒く澄んでいる。力強い眼差しは、秋月のものとは違う安心感があった。
「そもそも、これだけのことを俺たちは任されてるってことは、信頼されてるってことだろ。お前はもっと自信持っていいんだよ」
御影は励ますように、少々強めに鏑木の背中を叩いた。
「さ、飲みに行こうぜ。今日は俺の奢りだ」
「…はい!」
鏑木はいつものように、頼りになる”先輩”の背中を追いかけた。
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