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「詐欺とかじゃないですよね。」
待ち合わせのカフェに来たのは同級生と思われる女子高生。援助交際をしていると睨んでいた子だった。
「詐欺じゃないよ。」
俺は出来る限り警戒されないように優しく言った。インタビューはファーストタッチが重要である。ここで警戒されたら何も掴めない。
「で、君は彼の自殺の理由を知ってるかい?」
俺はノートパソコンを開いて彼女に質問を始めた。彼女は淡々と答え始めた。
「正確な理由は知らないけど、多分いじめです。」
完全に予想通りだった。案外簡単な案件かもしれない。
「彼は誰にいじめられてたの?」
「違います。」
「えっ?」
「いじめられてたんじゃないです。いじめてたんです。」
俺は完全に混乱した。さっきまでの予想が、見事に崩れ去った。
「いじめてた?じゃあなんで自殺したのさ?」
俺の頭の中は疑問でいっぱいだった。
「ちょっと複雑な関係があって。」
彼女は困ったような顔をした。
「いいよ続けて。」
俺がそう言うと彼女は、俺の顔を見て謝礼を上げるよう要求してきた。なんと意地汚い女だろうか。俺のそんな気持ちが伝わったのだろうか、彼女は怒って言った。
「割に合わないのよ、1万円じゃ。」
そんなに危険な話なのか。俺はますます興味が湧いた。
「謝礼は話を聞いてから考えるよ。1万円以上は約束する。」
彼女は俺の言葉納得した後、話し始めた。
「あいつがいじめてたのは、有名な一流企業の社長の息子だったのよ。大金持ってるし、気弱そうだったのは知ってたけど、あいつのいじめ方は結構酷かった。同級生で知らない人はいないんじゃないかな。」
俺はまださっぱり分かっていなかった。なぜいじめている側が自殺するのか。
「ただね、いじめてた側の親がその有名な企業の傘下の会社に勤めていたのよ。それでいじめが発覚した後、その社長が裏で手を回したのか、その親は会社をクビになったの。それであいつのとこは一気に困窮した。知ってるのはこれぐらいね。」
俺はひとまず状況を整理した。自殺の原因は見えそうで見えない。
「本当に謝礼出してくれるんだよね。こんなリスク背負ったんだもの。」
「そんなに危険な話かい?」
俺は純粋に疑問に思った。
「あの社長、やばいのよ。この前もこのことを話した何人か停学になったし。」
なるほど、相当権力を持っているようだ。もっと深いところに何かがある気がした。
とりあえず彼女に二千円渡し、残りは記事にしてから渡すことで合意した。
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