夫の秘密

１．疑惑

明日で結婚してから４年になる。娘の小春(こはる)も3歳だ。
夫との出会いは友人の紹介で、付き合って1年もしないうちに妊娠し、いわゆるできちゃった結婚だった。

夫はIT企業の経理部で働き、結婚当時は会社の上場準備に携わる忙しい毎日を送っていた。
妊娠期間中、司は忙しさのあまり会社近くのホテルに寝泊まりし、帰宅しない日も多かった。
今は上場も成功して仕事も落ち着き、夫の役職も係長から課長になり、順調に昇進している。
給料も順調に増え、大きなターミナル駅近くにあるタワーマンションの高層階に住めるだけの所得を得ている。

亜希は可愛い女の子を産み、豪華なマンション暮らしをして、専業主婦の優雅な毎日だ。

今夜は手作りのケーキとごちそうでお祝いをする予定。
生クリームを伸ばしたところに小春がイチゴを乗せようとしている。

「ママ、どこ～？」

「そうね、真ん中かなぁ～。小春の好きなところでいいよ」

小春は嬉しそうにケーキの真ん中へ置こうとしたその瞬間、玄関の方から物音が聞こえた。

「ただいま」

夫の司が帰って来た。

「おかえりなさい」

「パパ～！」

イチゴを持ちながらパタパタと走り寄り、司の足元で立ち止まる。

「小春はケーキを作ってたのか？」

「パパとママのケーキ！」

「そうか、美味そうだ。風呂に入るから、それから一緒に食べよう」

「はぁ～い」

小春は幼稚園で習っているのか、片手を上げて楽しそうに返事をしている。