遺産は店舗と奴隷と僅かなお金

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遺産は店舗と奴隷と僅かなお金

 俺は幼い頃から父の仕事を観ていた。母は何処かの娼婦が産んだらしいが、顔も観たことがない。  奴隷の飯を俺が用意し、清潔間を保つように身の回りの世話をして衛生管理する。それが俺の出来る手伝いだった。  ある日、父が何処かの国から奴隷を買い付けて帰る途中、魔物に教われて奴隷共々殺されてしまった。  残された俺に待っていたのは、奴隷を住まわせていた店舗と、売れ残っていた奴隷達、それに食費等で残していた僅かなお金だけだった。  奴隷の主が死んだ為、自動的に俺が代わりの主となっていた。手の甲にいきなり紋章が表れたので、父の死に気付いた。  男女比一対三。労働奴隷よりも、性奴隷の需要が高かったせいだ。売れ残りは後数年が限界だろう。  年増を好む男が少数なので、性奴隷から労働奴隷に移るか、小間使にするしか道がない。妊娠すれば乳母の代わりには出来るかもしれないが、俺は御免だ。  奴隷同士の性行為はご法度。これは産まれる子が強制的に奴隷になる為、国が禁じた。  主がお手付きして産まれた子は、主が決めて良い事になってはいるが、大概が奴隷だ。  何故かと言えば不思議なことに、奴隷は子供を産むと奴隷紋が消えて、代わりに子供に奴隷紋が移ることが有るからだ。  だから、奴隷の主は大体外で子供を作る。俺が良い例だ。まさか奴隷の主になるとは、思いもしなかったが。  俺は物心が付いた頃に文字と計算を奴隷から教わり、手先が器用だと解ると、今度は料理を覚えさせられた。  父は奴隷商の才能は有ったみたいだが、親の役割、そして家事は壊滅的だった。良く俺はグレなかったものだ。  何にせよ、このまま奴隷が売れ残り続けると、生活が破綻する。借金になれば俺まで奴隷落ちしかねない。  今の残金で保って数ヶ月が限界。来年にはすっからかんだ。戦闘奴隷でも居れば、ダンジョンで稼ぎに行かせられたのだろうが、近場にはないしそれも無理。  俺が冒険者になり、稼ぐ方法も無くはないが、争い事なんてやった事もなければ、したいとも思わない。  畑仕事ならやれない事はないが、庭は狭いし自給自足も絶望的。何だこれ、詰んでないか?  自分一人の考えでは、解決策が思い付かなかったので、夕食時に奴隷達から案を出して貰う事にした。 「食事しながらで良いから聞いてくれ。このままお前達に買い手が付かずに居座り続けた場合、後三ヶ月くらいで生活費が無くなる。誰でも良いから何か良い案を出してくれないか?」  奴隷達は隣の者と話し始める。暫くして、一人の女奴隷が手を挙げた。 「奴隷三号か。話してくれ」  容姿が普通すぎて、誰の性癖にも引っ掛からず、とうとう処女のまま成人を向かえてしまい、姉と言うより皆の母親代わりになってしまった。 「はい。一応、私達成人組でしたら商業の手伝いくらいなら出来ると思います。男性人は肉体労働も可能です」 「うん、それは俺も考え付いた。明日、商業ギルドに奴隷を斡旋出来ないかを相談に行くつもりだ」 「それでしたら、私と、一号がお供します」  奴隷一号の男が頷く。最年長の売れ残りだ。肉体労働するには些か筋肉不足で、買い手が付かなかった。代わりに頭はそこそこ有ったので、雑用は任せられる。 「ならば、二号は店番だな。客が来たのなら一時間だけ待って貰え。その間の接待方法は一任する」 「判りました」  もう一人の、処女で成人してしまった売れ残り。肉体労働出来るんじゃないかと思えるくらいの筋肉を持つ寡黙な姉御肌。戦闘奴隷のなり損ないかと勘違いしそうだが、立派な性奴隷である。  割れた腹筋は、買い手の性癖に引っ掛からなかった様だ。体罰担当だが、皆には結構慕われている。  翌朝、朝食を済ませてから二人を連れて商業ギルドに向かった。良い返事が聞けると良いのだが。
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