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私はお年寄りには親切な方だ。自分の意見をはっきり伝える方だけど、無理強いはしない。お年寄りには、話しが通じない時もある。仕方なしに怪しい老婆の隣に腰を下ろす。ベンチが冷えてお尻を冷やす。ぴゅんと風が吹いた。
さ、さむい。
「お嬢ちゃん、ちょっとここからカードを引いてごらん」
カードの束を扇子のように広げた老婆の顔は、マントに隠れて見えない。さっさっと引いてしまおうっと、ちょうど真ん中にあるカードに触れる。
「そ、そ、それは!」
「え、え、えぇえ!?」
地響きのような老婆の声に驚いて思わず手を引っ込めた。
「勝手に手を引っ込めるでない!心のまま引くんだよ」
「......すみません」
もう一度カードの束を目の前に広げた。私はもう一度真ん中のカードに触れる。
「そ、そ、そ、それは!!!!」
「......」
私はお年寄りには親切だ。そしてどんな場合にも対応できる柔軟さがあった。ひょいっと真ん中のカードを引き抜いた。
「はい、おばあちゃん」
裏返しにしたまま老婆に渡す。老婆の痩せた皺だらけの手が私の選んだカードを持ち、マントの下に隠れている顔の傍に持っていく。
老婆の手が震え出した。
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