雪やこんこん

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「お嬢ちゃんよくおきき。お嬢ちゃんが今よりも大人になって、その間いろんなことがある。 ちょっとだけ辛いことがあるかもしれないし、幸せなこともあるかもしれない。大切な命を授かるかもしれないし、大切な人がこの世を去るかもしれない。そんな人生を生きながら、お嬢ちゃんは身も心も大人になっていく。 そんなお嬢ちゃんがね、自分の人生に向き合う時が来る。自分の人生を自分の為に生きようって思う時がきっとくる。その時、お嬢ちゃんは運命の人と出逢うよ。 そして運命が動き出す」  老婆は、私にカードを渡した。見掛けよりも温かい老婆の掌が私にカードを握らせ言葉を続けた。 「運命の輪だ。    お嬢ちゃん、幸せに欲張りにおなり。そうすればその輪は回り出すよ」 マントに隠れた老婆の顔がくしゃりと笑った気がした。  キラっとしたものが視界に入った。思わず空を見上げる。キラキラと雪が降り出した。あっという間に雪が次から次へと降り積もる。 「おばあちゃん、雪だ...」  老婆の姿がない。手元には老婆から受け取ったカードを握っている。そっと覗くと、時計のようなコンパスが大きく描かれている。 運命の輪だ。  ”幸せに欲張りにおなり。そうすればその輪は回り出すよ”  カードに雪が落ちて、静かに溶けた。 〈END〉
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