9人が本棚に入れています
本棚に追加
「お嬢ちゃんよくおきき。お嬢ちゃんが今よりも大人になって、その間いろんなことがある。
ちょっとだけ辛いことがあるかもしれないし、幸せなこともあるかもしれない。大切な命を授かるかもしれないし、大切な人がこの世を去るかもしれない。そんな人生を生きながら、お嬢ちゃんは身も心も大人になっていく。
そんなお嬢ちゃんがね、自分の人生に向き合う時が来る。自分の人生を自分の為に生きようって思う時がきっとくる。その時、お嬢ちゃんは運命の人と出逢うよ。
そして運命が動き出す」
老婆は、私にカードを渡した。見掛けよりも温かい老婆の掌が私にカードを握らせ言葉を続けた。
「運命の輪だ。
お嬢ちゃん、幸せに欲張りにおなり。そうすればその輪は回り出すよ」
マントに隠れた老婆の顔がくしゃりと笑った気がした。
キラっとしたものが視界に入った。思わず空を見上げる。キラキラと雪が降り出した。あっという間に雪が次から次へと降り積もる。
「おばあちゃん、雪だ...」
老婆の姿がない。手元には老婆から受け取ったカードを握っている。そっと覗くと、時計のようなコンパスが大きく描かれている。
運命の輪だ。
”幸せに欲張りにおなり。そうすればその輪は回り出すよ”
カードに雪が落ちて、静かに溶けた。
〈END〉
最初のコメントを投稿しよう!