雪やこんこん

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「さむーーい」  赤いマフラーに顔を埋めながら思わず声が出た。今年一番の寒さだと思った。こんな寒い朝に大学に行かないといけないのは、心理学の先生がやたらに出席を取る面倒臭いタイプの人だからだ。  そういえば、雪が降るって天気予報で言っていたななんて思いながら、泣きそうな空を見上げる。  ん?  空からキラっとしたものが見えた。雪?  今年初めての雪だ。いくら寒くても初めての雪は何かしらわくわくしてしまう。もう一度空を凝らしてみた。目をこすってもキラキラしたものは見えなかった。  見間違いだね。少しの残念と少しの安堵感を抱えて歩き出した。ブーツが凍った地面をコツっと鳴らす。 「おじょうちゃん」  地面から老婆の声がした。 「ん?」  私は二度見した。いやいや、見間違いであって欲しい。まさかこんな寒い朝に、小さなおばあちゃんがベンチに座っていた。っていうかここって住宅街だし、ここにベンチなんて無かったよね。困惑している私にもう一度老婆が話しかける。 「もしもしお嬢ちゃん」 「......はい」 私はお年寄りには親切な方だ。だけど、あまり関わっちゃいけない雰囲気だ。黒いマントを被って魔女みたいだ。 「占ってあげよう」 「いいです」 私はお年寄りには親切な方だ。でも自分の意見ははっきり伝える方だ。 「そこに座りなさい」 きいちゃいない。  
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