彼氏ひとすじ。

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俺の目の前に芸能人に引けを取らない美人がつったっていた。 飲んでいたコーヒーを吹き出すところだった。 「貴方が、私の友達に彼女紹介してっていったひと?」 人形のような整った顔。 29歳と聞いていたが、女子高生にみえる透き通る肌。 生きている人間に、みえない。 美しすぎて、手が震えそうになる。 「そ、そうだ。綺麗だよと言っていたけどだいたい社交辞令.......いや、見事すぎて文句ないわ」 「何言ってるの?付き合うなんて一言も言ってない。だいたい、その容姿でよく私に声かけようと思うよね?」 .......前言撤回。 なんだ、この女。 席に座ると、アイスコーヒーを注文し、俺をみて髪型、服装、カバン、時計、そして名刺を出すように 要求してくる。 「聞いたでしょ?私、離婚しているの。バツイチなの。子ども出来なかったからいないけど.......」 「初対面で失礼じゃないか、俺もバツイチだけど。子どももいるし、娘は2人とも大切だ」 そう、俺もバツイチで 小学生の娘2人がいて、妻は不倫して男と出ていった。 真面目な女を紹介して欲しいって言ったんだけどな。 こいつも不倫、するんじゃないのか? 「不倫して出ていった元奥さんね?私は不倫も浮気もしないわ。彼氏、夫ひとすじよ」 眼力あり過ぎる。 みつめられて、息をするのを、忘れてしまう。 「それは、ありがたいね」 「そうでしょ?だから、とりあえず友達から仲良くして。」 言い終わると 席をたち 「昼休みに抜けてきたの。帰るわ。ここ払っておいてね。これLINE。仕事終わったら連絡するわ」 .......まて。 俺はまだなにも言ってな....... もう彼女は、カフェから出ていった。 なんだろう、コミュニケーションが一方的じゃなかったか? その日の夜、LINEの通知が入る。 【仕事終わったわ。ねぇ?通話していい?】 通話.......? 「ね?イヤホンマイクしてる?繋げてて。これから電車で家まで帰るから」 「は?」 は?繋げてて?? わけもわからぬまま、在宅ワークの俺は休校になった娘たちがわちゃわちゃと背後で話す音を垂れ流しながら LINEを繋げた。 「ほんとうに、娘いるのね.......ねぇ?わたし通勤一時間半なの。ひとりで帰るの心細いから繋げてて話さなくていいから。あと、その娘さ、元奥さんのところ置いてきて縁を切れば?」 .......ナニイッテンダこいつ。 一瞬、殺意に近い憎悪が産まれそうになる。まて、抑えろ。 いやまだ会って2日目。 2日目な。 あの女友達は、仕事関連の営業だから トラブルになると仕事に影響がある。 断るにしても、穏便に、しないと。 「娘は、奥さんのっていうより、俺のこどもって思えない?こどもに罪はないからさ」 通話でよかった。たぶん、笑顔が引きつっていて、ガン飛ばしているに違いない。 「私が貴方を愛せれば、こどもも愛せるとおもう。だから貴方を好きになるように頑張って」 ぶっ飛ばしたろか。 いや口が悪い。 こいつ、自分の容姿がいいこと鼻にかけすぎてないか。中身サイコパスじゃないか? ナニイッテンダ、よ こども、そうか、こども出来なかったから....... 「ごめん、無神経だったな。こどもいないんだもんな」 「そう、それ。私いないのよ。でもね私ね子宮の病気あって産めないから。産むならウクライナの代理出産利用しようと思うんだけど」 .......リビングのテーブルで在宅ワークをしていたのだが、目頭を右手で覆う。 娘たちがどうしたの?パパと心配している。 「ウクライナ?!代理出産?このコロナの御時世にどうやって.......」 「私のこどもよ、美しいに決まっているわ。元旦那なんて私がなんどいってもどんどん太って本当に無理だったのよね」 .......太って? 太る? ストレスで太っていったんじゃないのか、それは。 「まさかと思うけど離婚理由って」 「相手が痩せないから、なんどいっても.......向上心なさすぎよね。意識のひくい男は許せないの。だから、離婚したのよ」 ヤバい。 ヤバい。 「あ、最寄り駅ついたわ。私買い物するからまた連絡するから」 そう言って通話を切られた。 な、なぜだかわからないけど 心臓がドキドキして警報器が鳴り響いた。 ヤバい女、だ。! 間違いない。 もし付き合って、俺の娘が気に入らなくなったらなにするかわからない。 翌日、俺は 友達からのLINE通話で 彼女の通話に出られなかった。 そこから 何度も【不在着信】 【不在着信】 【不在着信】 【不在着信】 .......極めつけは 【スクリーンショット】で 【俺が通話中】と表記される画面。 俺は眠れなくなっていた。 怖すぎる。 怖い。 こいつを紹介した女に連絡をした。 「あー、やっぱりダメだった?ごめんね、彼女めちゃくちゃ綺麗なんだけど友達いないし、異性も彼氏できるとぶった斬るし、彼氏だけ、夫だけになるんだよね。前の旦那さんノイローゼになって過食でデブになっちゃったみたいよね。」 「なんでそんな怖い女紹介するんだよ」 一瞬、通話の向こうが静かになった。 「だ、大丈夫か?」 「どうして私以外の女と通話するの?」 それは、バツイチの美女の声だった。 「友達、じゃないのか、なにしたんだ、俺はただちょっと聞いただけ.......」 「友達、トモダチナンテイラナイ。私は彼氏だけがいればいい」 背後でパトカーのサイレンの音が鳴る。通話相手は職場にいたようで、誰かに通報されたようだ。 警察にもちろん、俺も事情聴取された。 女は、怖い。 普通、普通が一番。 【ワタシハカレシヒトスジ】 End
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