アストロハロー

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 委員会が長引き帰りが遅くなった。12月にもなればこの時間にはもう日はすっかり沈みここらを寒さで覆い尽くす。歩くたびに吐く息が白くなってすっと空に戻っていった。今日は何かと忙しい一日で、一人になった途端に足先からじんわりと重くなる。足取りも軽快さを失ってまばらなワルツになる。  冬は自分とその他の輪郭がきゅっとハッキリするから好きだ。自分と他人、自分と外の空気、自分と意識。全てが曖昧にならずにきちんと分かれる気がする。夏のあの溶けて全てが曖昧になっていく感覚が苦手な僕からしたら当然の事だった。生ぬるいゼリーの中で泳ぐのが夏だとしたら、冬に僕が潜るのは冷たい氷水だろうか。ふと一番好きな日のことを考える。大晦日の午前中、うんそうだな午前十時くらい。どこか皆忙しなく動いていて、けれど街に人は少なくあちこちの家から様々な音が聞こえてくる。一年の中であの日が一番楽しい。どこにいても心が踊るしとても落ち着く。ああ、みぞおちの奥が少しだけふわっと浮くような、そんな好きの気持ちがとてもたのしい。
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