The Giving Tree おおきな木 

15/22
前へ
/22ページ
次へ
9-2. 15  ……という事は、俺の他に男がいるってことだ。  情夫なのか金銭だけが絡む仲なのか、いろいろな思いが交錯して その夜は、ほとんど眠れなかった。  何てふしだらな母親なんだ、子供達が知ったらどうなると思う?  そんな台詞を脳内で何度も反芻してみたが、俺が妻に 実際に言うことはなかった。  良妻賢母を絵に描いたような由利恵がこんな意趣返しのような ことができるだろうか。  だが無邪気に出来るようなことでもない。  この15年間、俺を許し仕えてきてくれた由利恵を知っているだけに 混乱したものの、直に責めたり離婚を迫る気にはなれなかった。  あれから数日後、元通り夫婦の営みも以前のように再会された。  少しの嫉妬は刺激となり、妻を求めることは止められなかった。  自分さえ子供達を巻き込んで暴露しなければ、妻を責めなければ 何も知らずにいた頃のように暮らせるのか。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

229人が本棚に入れています
本棚に追加