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1-2.❧-2
実家はすでに兄が継いでおり頼ることは憚られた。
両親は芽衣子が玉の輿に乗って順風満帆だった頃には
可愛がってもくれ、世話も焼いてくれたのだが
そこは親子であっても金の切れ目が縁の切れ目とばかりに
離婚した後は薄情で冷たいものだった。
そんな調子だから無論金銭的援助をしてくれるはずもなく
派遣会社を首になった後は、人生坂道をいとも簡単に転がり落ちて
ゆくだけだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そしてそんな時、元彼の木下直哉と再会したのだ。
芽衣子は再会後の直哉と話した感触で『悪くない』と判断した。
こちらから振ったにも拘らず、今の直哉の話し振りを見ている限り
恨みつらみはなさそうに見える。
直哉は自分に振られた後、ちゃっかりと年の離れた若い今の妻と
結婚していたようだ。
子供も2人いるのだとか。
子供が小さくて奥さんは何かと今は大変なことだろう。
夫に四六時中目を向ける余裕はないはず。
『落としてみせる』
芽衣子は再会したその日にそんな風に考えた。
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