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4.❧-6
夫が出て行った日は5月5日、子供の日だった。
何も子供の日に出て行かなくてもいいのに。
その夜は子供たちに支えられて眠りについた。
翌日になってまた、悲しみが襲って来た。
まぐろの意味を調べた。
夫は何て残酷なのだろう。
私は気が付くと子供達を連れてネオン街をトボトボと歩いていた。
小さな公園があったのでそこで子供達を遊ばせた。
ずっと頭の中を駆け巡るのは、『あたし、どーしよう』……だった。
あたし、どうしよう、このフレーズがリフレインするばかり。
私は泣ける場所を探しているのかもしれない。
私にはすでに両親がなく、頼れる兄弟もいない。
ほんとに私には子供達しかいないのだ。
夫が子供のことも何ひとつ気にかけることなく家を出た今
子供達を守れるのは自分しかいない。
へこたれていてはだめだ。
自分を叱責してみる。
◇ ◇ ◇ ◇
「どーした?
痛いところでもある? 」
そう問いかける男性が私にタオルハンカチを差し出した。
私は首を振った……ら、涙がポタポタと頬を伝い下へとしたたり
落ちていった。
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