The Giving Tree おおきな木   -8-

1/23
157人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
木下由利恵 専業主婦 28才    長女 真里奈   5才 木下直哉 リーマン 36才    長男 秀人    4才                  次男 ひろみ 8年後に生まれる 森下孝蔵 彫師    29才 砂生芽衣子 夜の蝶 36才 ------------------------------------------------------------ 1.☑  木下直哉はクライアントへの接待で使った店で 9年振りに 学生時代から7年付き合っていた元彼女の砂生芽衣子と再会した。  9年経っても芽衣子の美貌はほとんど衰えを感じさせず 活き活きとしていて輝き、まだまだ十二分に美しく見えた。  桜の咲く頃を『花時』というが、そののち満開の『花盛り』を過ぎ、 桜は『零れ桜』となり散ってゆくのが定め。  『花盛り』にならい、『女盛り』をとうに過ぎてなお美しい芽衣子は 散りゆく定めを前に、最後の輝きを増しているのかもしれなかった。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇   付き合っていた当時、芽衣子はあっさりと木下を振り、玉の輿に乗って どこやらの大企業の御曹司と結婚したはず。  『その芽衣子が何故この店に?』と呟いた木下は、『いるのか』と いう言葉を飲み込んだ。   それに呼応するかのように芽衣子は、商売上というよりも昔の 元彼女という立ち位置で、その後の身の上話を木下に語って聞かせた。  それによると・・・  不妊が理由でたった2年やそこらで婚家を追い出されてしまった。  そこで、再度芽衣子は玉の輿を狙うべく、大企業に派遣で就職するも 独身のエリートからはお声がかからず、声をかけて来るのは 遊びが目的の既婚者ばかりだったという。  その()、本気で好きになった相手もいたが、不倫相手の妻にバレ 相手はあっさりと妻子のいる家庭に戻ってしまった。  そして会社にも不倫していたことがバレ派遣会社を首になる。  精神を病み、金銭的にも立ち行かなくなり、それで夜の世界に 身を投じることとなった。  とまぁ、直哉に語って聞かせたのはこの辺りまでのこと。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!