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採用試験やその結果が分かって働き始めるまで暇なのは、僕も同じだ。こうしてこの日、僕は初めて邸宅の中へと入った。まずはスープが入った鍋を厨房に置かせてもらった後、案内された応接間で向かい合ってソファに座った。
「ジル、だったか?」
「はい」
「君は、何歳だ?」
「二十三歳です。ロベルトさんは?」
「敬語でなくて構わないし、『さん』も不要だ。俺は、二十七歳だ」
「意外とフランク! 僕より四歳年上ですね」
僕が両頬を持ち上げると、ロベルトが喉で笑った。
この日は、その後夕食時になるまで、二人でずっと雑談をしていた。
「明日も来てくれるか?」
「僕で良ければ喜んで」
丁度暇をしているのは同じなので、親近感を抱いてしまったし、ロベルトの話は面白かった。こうして、以降僕は、ロベルトの家に日参して、雑談をするようになった。
毎日、沢山の事を話した。趣味や、好きな料理、嫌いな食べ物、動物について。専ら僕が話す事が多くて、ロベルトは質問を投げた後、笑顔で話を聞いてくれた。その内に、一ヶ月があっという間に経過し、四月末が訪れた。
「ロベルト、今日は家賃の日だよ」
「ああ、そうだったな」
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