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戻ってきた主の青年は、家賃の金貨が入った麻袋と、それとは別にカゴに入った雪苺という果物を僕に渡してきた。
「家賃、確かに。ええと、こちらは?」
「ベッケルト氏への見舞いの品だ。渡してほしい。それと――何度か来てもらったようなのに、押し売りや詐欺師かと誤解し、ドアを開けなかった詫びの品だ」
「全然お気になさらないで下さい! ただ、お気持ち、本当に有難うございます」
僕は雪苺が大好物なので、嬉しくなって両頬を持ち上げた。青年は表情を変えるでもなく、ただじっと僕を見ていた。
「多分、来月も僕が来るので、宜しくお願いします!」
「……そうか。覚えておく」
「有難うございます。それでは、失礼します!」
一礼し、僕は受け取ったものを手に、その場を後にした。
これで今月の家賃の回収は全て完了だ。僕は祖父の元へと戻り、雪苺のカゴを渡して、その事を報告した。するとお祖父ちゃんが目元の皴を更に深くした。
「ロベルト様は好青年だったじゃろう? 一見冷たいが、そうか、見舞いの品か。相変わらず、気を遣って下さる」
「そうだね。この雪苺、すごく美味しいね!」
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