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母の男性遍歴がどれほど凄まじかったのか、今となってはわからない。ただ、織絵の話が本当であるならば、彼女が酷いやり方で捨てた男性は相当な数に登っていたのだろう。流石に、全員がなんらかの形で死んでいるなんて思いたくはない。
同時に。彼女にとっては、セックスはそれそのものが目的で、その結果は迷惑なものでしかなかったのだろう。だから、何度もやるべき対処を怠って命を使い捨てた。――何かが違っていれば、僕や姉達もその仲間入りをしていたかもしれないと思うと、正直ぞっとしてしまう話だが。
母は、この半年後に亡くなった。まるで生気を何かに吸い取られたような、かつての美貌の面影もない枯れ枝のような姿になって。
果たして織絵の予言は当たったのか、否か。
問題は話がここで終わらないということである。
「……ごめん、春佳君。私と、別れてくれないかな」
母が亡くなって一ヶ月後、僕は彼女に別れを告げられた。恐らくは自分のために誰かを振るなんてことをしないであろう、彼女がだ。
初めて見るような青ざめた顔で、織絵が最後に言ったことはひとつ。
「……春佳君、長生きしたいなら……女の人と付き合うの、避けたほうがいいかも。ごめん、私にはそれしか言えない……」
彼女が見ていた、僕の斜め後ろ。
何がそこにいたのか、最後まで教えては貰えなかった。
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