霊感わんこ、カイロの冒険!

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「そっか。じゃあテンサイな君にお願いしていい?ぼくの大事なお地蔵さんが、倒れちゃってるんだ。ずっとうつ伏せで苦しいんだ。でも田んぼの土手だし雑草に埋もれちゃってるせいでみんな気づいてくれなかったみたいで……起こして貰ってもいい?」  どうやら、それが悲しくて彼は泣いていたらしい。なるほど、彼のすぐ横の灰色の意思の塊はお地蔵さんだったようだ。お安い御用、と思って僕はぐいぐいと石の下に鼻先を突っ込もうとする、も――悲しいかな、僕はまだ三か月の子犬。まだまだ小さいし、力も弱い。重たい石の塊を元に戻すだけの力はないわけで。 「カイロ何やって……あれ?ひょっとしてこれ、お地蔵さん?倒れちゃってて、可哀相。これを元に戻したいの?」  が、そこは空気が読めるかいぬし。僕がやろうとしていることに気づいて、倒れてしまっていたお地蔵さんを元に戻してくれた。さすが、女性とはいえ大人の人間の力は違う。褒めてつかわすぞニンゲン!と僕は彼女に一声吠えて尻尾を振った。 「わあ、ありがとう二人とも!」  それを見て、ボロ布の少年は眼を輝かせた。 「これで息ができるよ、嬉しいな!今はちょっと何もないけど……次に会ったらお礼、考えておくよ」 「気にするな子供!あ、でもそれなら次に会った時は僕と遊んでくれると嬉しいんだぞ!」 「ふふふ、そうするね、ありがとうね!」  そして、少年はふわふわふわ、と宙に浮かび上がり――光となって消えていった。僕は人間のように手を振る代わりに、シッポを振って挨拶をしたのだった。 「……ねえ、なんかいるの?なんかいるの、カイロ!?」  何もない空を見てシッポを振る僕に、何もわかってないかいぬしはややガチでビビっていた様子だったが。 ――うーん、それよりもかいぬしの背中にのっかっているオジさんが、ズボン脱いでオシッコしようとしてる方が問題だと思うんだけどなあ。  まあ、見えない方が幸せなこともある。そういうことにしておこう。  なお後日。  あのお地蔵さんがあった田んぼの所有者一家と、近隣に住んでいた家々に謎の疫病が蔓延していたらしい、と発覚。ついでに、それらがお地蔵さんを元に戻した途端にけろっと治ったらしいということも発覚。  うーん、テンサイ犬である僕は、ひょっとしたら知らないうちに人助けをしてしまったということだろうか。なんと罪な犬であることか。 「え、え、どういうこと?どういうこと?あのお地蔵さんってナニ!?」  相変わらずかいぬしは悲鳴を上げていたが、無視しておくことにしよう。  さあ今日もさっさと行くぞ、楽しい散歩へ!
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