2. 進展

4/4
前へ
/56ページ
次へ
「そんな……あ……あ、あ! よかったら、お礼に、お夕飯を御馳走させてください」 「え、そんなお礼だなんて」 たかがファミレスに、と本当に恥ずかしくなった。 「いいえ、ぜひ。私の気持ちが済みませんから」 そんな申し出に、保晴はありがたく、その晩夕飯を食べに隣の部屋を訪ねる。 郁美はいつも19時頃に一度休憩を取り、玲が作った夕飯を食べて20時半の閉店後の片づけまでいてくれるが、お店が休みの日は郁美が作るのが常だという。数日持つような常備菜も作って置いておく。 炊き立ての白米とアサリのお味噌汁だけで感動してしまった。男のひとり暮らしだ、外食が多いだけならまだしも、自宅でもレトルトや総菜が多い。 カレイの煮つけに感動した、とてもおいしかった。 「ああ、いいですねえ。手作りのご飯は。心が温まる」 ずいぶん久々に家庭的な食事を摂ったような気がする、もちろん定食屋でも味わえるものだが。 「玲ちゃんが作ってくれた卵焼きもおいしいね」 いうと玲はにこりと微笑んだ。まだ中学2年生だが、母ひとり子ひとりだからだろうか、料理の腕は確かなようだ。 静かな食事の時間を三人で、ゆっくりと楽しんだ。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加