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1. 出会い
速水保晴は、アンティークの家具と雑貨の経営で生計を立てていた。
工房も持ち、アンティーク家具の販売だけに限らず修理も請け負うことで不自由ない収入は得られている。
夏の終わり、働き始めて1年あまりになる女性が、夫の転勤に伴いバイトを辞めたい旨の申し出があった。
保晴はすぐさま募集の広告を出す、女性は開店からの数時間のみ働いており、夕方からは別の者がいてくれるが、それまで自分一人では店番などできないからだ。
『横浜元町近くのアンティーク家具販売店の商品案内。開店11時、その30分前の開店準備から働ける方。就業時間は応相談。交通費支給、社宅完備』
社宅は工房で働く人のためのものだが部屋は空いていた。一階が店舗と工房、その二階がアパートになっている、そこに保晴も住んでいた。
1Kと決して広くはないが、単身で住むには十分な広さだった。
その日のうちに5人も申し込みがあり、ありがたかった、すぐさま募集は締め切り、それぞれに面接の時間を知らせた。
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