6. 進学

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☆ 果たして、面談当日。 「ようこそおいでくださいました」 担任が言う、中年の女性教師だ。お互い面識はあった、郁美の葬儀である。深々と首を垂れて挨拶をした。 「あの、早速なんですが、玲さんの進路なんですが……」 「進学はしません、就職しますっ」 玲が力強く宣言する。 「まだそんなこと言ってるのか」 保晴が呆れ気味に答える、玲はつんと言いたげに顔をそっぽに向けた。 「いえ、もちろん、僕は進学を勧めていますから」 保晴の言葉に、担任はほっとした色を見せる。 「いやっ、勉強嫌いだもんっ」 「勉強する機会もらえるのは贅沢なことだと思ったほうがいいぞ」 優しく言うが、玲はまたもつんとそっぽを向く。 「名前を書けば入学できるような学校でもいい、学歴はあって越したことはない」 「いえ、玲さんなら、もう少し上の学校も狙えますから。今からでもきちんと準備をすれば、さらに上も」 担任も言うが、玲の心は動かない。 「玲ちゃん」 「私、保晴さんのお店手伝う! 工房のみんなに仕事教えてもらう!」 そんなことを思っていたのかと保晴は微笑んだ。確かによく工房に顔を出しているが。 「そうか、それは嬉しいな。だがうちは中卒じゃ雇わないぞ」 言うと玲はぎろりと睨みつけた。 「須山さんが、中卒だっていってたよ!」 保晴は内心天井を見上げる、その通りだ、須山は腕のいい職人だが、少年院で教わった技術だ。 「でも残念、彼も高校には通っているよ」
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