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7. 誕生日プレゼント
玲は晴れて高校へ進学した。
真新しい制服を郁美の墓まで見せに行った。墓は宗派を問わない納骨堂を選んだ。速水家の墓もあるが遠方であり、そもそも郁美を入れるわけにはいかないだろう。いずれ自分も一緒に同じ墓に、時々玲が来てくれたらそれでいい、ならば近いほうがいいだろうと購入を決めた。
そしてまもなく玲の誕生日である。
昨年は三人でお祝いをした、賑やかだったなと思いながら、夕飯の時に玲に話を切り出す。
「玲ちゃん、6月はお誕生日だったね、今年もケーキを用意するね。去年のところのでいいかな」
「うん!」
店名などではよくわからなったが、確かにおいしかったのを覚えている、また食べたいと思った。
「プレゼントは何がいいかな」
「なんにも要らない」
玲は笑顔で言う。
「でも」
保晴は食い下がったが、
「本当に、ほしいものなんかない。幸せに暮らせてれば、それでいい」
なんとも欲のない言葉だった、保晴は残念に思いながらも玲の気持ちは尊重した。
☆
翌年も穏やかに玲の誕生日を迎えた、そしてそのまた翌年、答えは同じだろうと思いながらも保晴が聞くと。
「うーん、そうだなあ」
呟いてからご飯を一口口に放り込み、ゆっくり咀嚼し、嚥下してから答える。
「なんでもいいの?」
「うん? まあ、とりあえずはなんでも。無茶でなければ」
珍しく欲しいものがあるらしい、保晴は笑顔で聞き返した。極端に高いものや、あまりに大きいものなど、実現不可能なものでなければ、できるだけ希望に応えたいと思いそう告げる。
「うん、じゃあ、もっと近くなったら言う」
「ん? 準備もあるよ、当日渡せるようにね?」
「うん」
あとひと月余りだ。
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