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☆
今年もケーキでお祝いをした。
だが、保晴はプレゼントの準備はできていない、当日言うと言ってそれきりなのだ。
「玲、プレゼントはどうするんだい?」
もう食事も終わろうというのに、玲はまだ言わない。終わってから買いに行こうというなら早く出かけないとである。
「うん。あのね」
言って立ち上がると、いつも使っているナップザックを手繰り寄せ、中からクリアファイルを取り出しそこに入っていた紙を引っ張り出した。
テーブルに置かれたそれをなんだろうと見た瞬間、息を呑んだ。同時に玲が言葉を発する。
「保晴さんと結婚したい」
「……は……えっ、え!? は!?」
そこには間違いなく婚姻届と書かれていた。
「い、いやいやいやいやいや……」
既に玲が書き込めるものは全て書かれたそれを見て保晴は呻いてしまう。
親子ほどに年が離れ──いや、ほどでない、本当に離れている。そんな男と、まだ高校生の玲が結婚など、世間が認めるわけがない。
「玲ちゃん、僕と君とじゃ30歳も年が離れているんだぞ」
「うん、気にしないよ」
玲は笑顔で答えた。
「いや……っ、君のお母さんより年上なんだぞっ」
「知ってるよ」
玲はあっけらかんと言う。
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