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☆
婚姻届には、証人がいる。それは工房の者に頼んだ。
ふたりの結婚に驚きつつも祝福をしてくれて、保晴は恥ずかしくも嬉しくなってしまう。
玲も珍しく興奮した様子だった、その足で役所にも提出に行き無事に提出が終わる。受け付けてくれた職員が何度も姿を確認するのが恥ずかしかったが。
「えへ……っ、本当に夫婦になれたんだね……!」
喜ぶ玲に、保晴も嬉しくなった。これでいいのだと思えて来る。
だがその晩、玲が保晴の布団に潜り込んできて驚いた。
「れ、れれれ、玲ちゃん! どうした!」
「どうって。子作りしよ」
「いやいやいやいやいや……」
保晴は正座をして頭を抱えた。
(いや、そうなんだが。玲ちゃんが思う家族になるには、それをしないといけないのだが)
ここへ来て現実に気が付いた。
まだうら若い玲、確認もできないがおそらく処女だ、それをもう初老の自分が奪ってよいものか。
なにより自分は玲の母と関係を持っている。母と子を抱く羽目になるのだと、今更ながら思い知った。
18歳になったばかりの玲は小柄なのもあって幼く見える、そんな女の子を──。
(僕には無理だー!)
膝の上に拳を握る。
「玲ちゃんっ」
呼ぶと玲は「はい」と返事をして、保晴の前に正座した。
「僕にとって君はまだ子供だっ、そんな子と、そういうことはできないっ」
玲はきょとんと保晴を見上げる。
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