8. 残酷な運命

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とにかく男に任せておけばいいんだと言われ、そうかと納得した。ただでさえ年上の男だ、言われるがままにしよう。 そこへ、保晴が戻ってくる。玲が掛け布団からちょこんと顔を出しているのを見てため息が出た。 「……玲」 「子作りしよ」 明るく言われて再度ため息が出る。子作りの意味がわかっているのかと聞きたくなる軽さだ。 「もう少し後でもいいんじゃないか? その……僕なんかの年じゃ、大人になる年齢は20歳だったから、それなら……」 「そうやって、どんどん先延ばしにする」 玲がきつく声を上げる。 「私がどうして欲しいか知ってるくせに」 知っている、子供が、家族が欲しいと言っていた。 なんとか他にいい人が現れれば思ったが、玲は一途に自分を求めてくれた──その気持ちに答えてやらねば、心の奥底にある罪悪感と優越感を抑え込み思う。 (──玲の望みだ) そう言い訳をした、仏壇にちらりと視線を走らせ心の中で郁美に詫び、布団の傍らに膝をつき掛け布団をめくる──玲の全裸が目に入り慌ててそむけた。 「やっくん」 夫婦なのだからと親しみを込めて玲は保晴をそう呼ぶようになった、自分もいつの間にか「ちゃん」をつけるのをやめていた。 (いいんだ、僕たちは、夫婦なんだ) 寝巻の上衣を脱いでから布団に入った、玲の体に覆いかぶさり、見下ろしながら聞いた。 「途中でも嫌だと思ったら言うんだよ、すぐに辞めるから」 それはやはり保晴ではないと感じた時の話だ、どう考えても年歳差がありすぎる、一時の迷いで結婚を選んでしまった可能性もあるとそう言ったが、目の前の玲は嬉しそうに頬を赤らめて答えた。 「そんなことないよ、すごく幸せだもん」 玲に求められている、そう思うだけで体が熱くなるのはなぜだろう。 (自分にもまだ、こんな気持ちが残っていたとは──) 玲の手にチューブのローションまで見つけて、保晴は笑顔になってしまう。
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