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どうかこれでと切に願うが、残念ながら1度目の提供では子は授からなかった。
提供者は性交渉を嫌がり、注射器を利用して玲の体内の取り込んだがやはりそんなものは自然の摂理に反している。もらうならきちんと交渉があったほうがいいのではないか──自分の思考が完全におかしいことには気づかずそんな思いに捕らわれ、二度目の精子提供を同じ者に依頼し、土下座しててまで玲を抱いてくれと頼んだ。
それでも提供者は乗り気ではないようだ、前戯はしたくないという。代わりに玲の体は保晴が温めた、そしていよいよ提供者が吐精するというときになって保晴はベッドから離れる。
玲は保晴に他人に抱かれる姿を見られたくないという、当然だと保晴はなるべくベッドから離れ、壁に向かって立った。
「──あ……っ」
何とも熱く、切ない玲の声が背後から聞こえた──聞きたくない声だった、どうせならトイレか風呂場にでも行けばよかったとその時になって後悔した。
妻がよその男に抱かれている様子を知ることになるなんて。
荒く速い呼吸が興奮を知らせてくれた、呻くような喘ぎ声は我慢し、無理矢理抑え込んでいるのだろう。
見なくてもわかった、妻は乱れ、よがっている。
自分が知る玲は、つい直前まで自分の腕の中にいた玲は、そんなに激しい反応を見せたことがない。
ベッドが軋む音と肉同士がぶつかり合う音が背後から迫ってくるような気がした、聞きながらなぜこんなことを頼んでしまったのだろうと、今更ながら悔いた。
まだ若い妻が、やはり若く見目麗しい精子提供者と、セックスをしている。
早く終わってくれ、そう思った時。
「終わりました」
男が静かに告げた、思いのほか早く事が済んだことにほっとし、言葉が出た。
「ありがとう!」
妻を寝取られながら、何を言っているのか──いや、自ら望んだのだ、恨むのは筋違いだ。そして妻が望む家族になれるようにと翌日も提供者との性行為を頼んだ。
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