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翌日には玲は、明日はスーパーのタイムセールに行きたいと言い出した。そのネット広告まで見せてくれる。
ああ行っておいで、と言いながらも思う、きっとまたホテルへ行くのだろう──きちんと相手を確認するべきだろうか。
☆
数日悩みに悩んだ、だが玲の幸せを願うのならばと覚悟を決める。
その日も玲のスマートフォンが震えて、玲は笑顔でそれを確認していた。
工房の者に少し出かけるから店番を頼むとあらかじめ伝えてある、じゃあ行ってくるからと断り店を出た。
先日と同じルートでホテルへ──出入口が見える場所で出て来るのを待った。
2時間とかからず玲は男性と腕を組み出てきた──男性に見覚えがあった、精子の提供を頼んだ相手、江川光輝だ。
そうか、君だったのか、と妙に納得したのはなぜだろう。
玲の嬉しそうに微笑む顔が眩しかった、自分の前では見せたことがない輝きを感じた。恋する女性はきれいだというが、本当なのだろう。
その玲と目が合うと、すぐさま表情が曇った、慌てて腕をほどき離れた様子に、内緒にしておきたかったのだとわかった。
保晴は微笑んでいた、やけに晴れやかな気持ちになっていた。
これで自分の眼鏡に叶う相手でなければ怒鳴りつけ、引き離していたかもしれない──光輝ならきっと玲を幸せにしてくれる、そんな確信があった。
たくさんの候補者の中から光輝を選んだのは、他ならぬ玲なのだ。
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