10. 穏やかな日々

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笑顔でいいながらスマートフォンを操作して布団屋の番号を探した。ベッドはあるが、掛け布団の準備はない、いつも貸布団を利用している。 「四つにしておこうか」 光輝の両親と弟ふたりが来ると伝えらえた。 光輝のすぐ下の弟、瑞基(みずき)は、現在横浜市内の大学に通っており保晴が営むアパート住まいだ、そこから一組は持ってきても良いか、しかしそれは面倒かと言葉に出して確認した時、 「はあ!?」 なんとも鋭い光輝の声がした、玲も「えっ!」と驚いた声を上げる。 「あのやろう、学校始まるまで帰ってこなくていいって脅したのに」 脅したレベルかと保晴は肩をすくめる。 瑞基の在学中はこちらで世話することになったが、どうにも兄弟仲はよくないようだ。いや義理のきょうだいとなる玲も苦手としている。夏休み入ってから、光輝に追い出されるように故郷である愛知に戻っていたが。 「親がいなくなったら身の回りのことができないとか言い訳するつもりだな」 光輝が苛立たしげに言って、自身のスマートフォンをジーンズの後ろポケットから抜き出す。帰ってきてもこの家には泊まるなと、瑞基にメッセージを送るつもりだ。 玲たち夫妻と瑞基の間に起きた事件を、保晴はいまだに知らされていない。ふたりきりにするな、しないでと懇願されているので従っているが、瑞基のほうはふたりをとても慕っており、その板挟みで保晴は辛い時もある。 「でも、晴樹(はるき)くんも来るから、どうせならみんなでここに泊まってもらったほうがいいんじゃ?」 光輝にはふたりの弟がいる、晴樹も既に地元の大学に通っているが、今年は家族そろって横浜まで遊びに来るのだ。
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