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男を監視しながらの荷物の積み込みは終わった。
二台の車に乗って横浜へ向かうが。
「──念のため、男がついてこないか、注意しよう」
いうと皆ではいと返事をして発車する。幸い怪しい車が来ることはなかった。
社宅である店の二階で待つ郁美の元へ戻る。
「ああ、本当に、本当に……!」
見覚えのある荷物が運ばれてくるのを見て、郁美は泣き崩れる。助かったのだと安堵できた。
「ありがとうございます、なんとお礼を言っていいか……!」
「いえいえ、この仕事をやっていたことが役に立ったようで嬉しいです」
家具の配送には慣れている、大きなトラックもあったのが幸いだった。
「もしまた男が来たら、すぐに言ってくださいね、私たちが蹴散らしてやりますから」
保晴がいうと、須山たちもにこりと微笑む。郁美は何度も首を縦に振って頷いた。
新しい地で、新しい生活が始まる幸せを噛み締めていた。
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