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2020年1月28日(火)-2
「なかなか死者数がやばいことになっているじゃん」
子供たちの夕食を用意しながら、6時台のニュースを横目で見ていたわたしは思わずつぶやく。
昨年末からちらほら聞こえるようになった新型肺炎の患者数が本日、中国で4500人超になり、死者も100人を越えたらしい。
そのため日本政府は中国武漢に在中の日本人をチャーター機で帰国させるため、中国政府と交渉中だそうだ。
「早ければ明日にも第一便出発、か。無事に帰ってこられるといいんだけど」
海を越えたお隣の国の騒動かと思ったら、徐々に世界中に広がりはじめているというから厄介だ。
日本でもちらほらと症例が出てきた。はじまりは武漢から帰ってきたひと、そのあとは奈良県で観光業に従事する方だったか。
「これからの中国ってお正月休暇じゃん。わりと『武漢からの入国は禁止』って打ち出している国が多いのに、日本はそういうの全然ないのかしら」
とはいえ、昨今の観光事情を考えると、中国からの観光客の入国お断りというのは難しいだろうなぁと思える。
京都や東京、沖縄あたりは、この時期は中国人観光客でいっぱいになるというし、観光業に携わる方からすれば稼ぎ時だ。
「広がらなければいいんだけどね」
そんなことを思いつつ、子供たちに「唐揚げできたよ~」と声をかける。
唐揚げというパワーワードの効力は絶大だ。それまでタブレットかスマホでyoutubeを見ていた子供たちが「唐揚げ!?」と即座に食いついてくる。
「わーい、唐揚げ大好き!」
「むしろ君ら、ママの料理は唐揚げとハンバーグしか食べてくれないけどね……」
おかげで週に一回はどちらかのメニューを作っているわと愚痴りながら、ご飯と味噌汁を用意し、いただきまーすと箸をつける。
今日は夫の帰宅は遅くなるようだ。揚げたての唐揚げを食べられないなんて不運なことよ。
「うわー、この男の不倫内容、えげつなっ」
ニュースの内容が芸能コーナーに移り、さる俳優が未成年の女優と3年も不倫していたという事実が大々的に報じられていた。しかも俳優の奥様は当時1歳の双子を抱えながらの妊娠中だったという事実。
子供が二人だって両方が未就園児の頃は毎日死にそうだったのにと思うと胸が痛い。この俳優の顔は一生見なくていいと思える。
(とはいえ不倫ニュースはワイドショーの大好物だもんな。しばらくはあちこちこの俳優の顔ばっかりになるだろうな)
そんな顔は見たくないし、新型肺炎だの武漢肺炎だの呼ばれる、新しい感染症の話題もあんまり見たくない。不安を煽られてばっかりだ。
「テレビのチャンネル回すね~」
「ママ、ドラえもん見たい」
ドラえもんのほうがまだ平和だわな。わたしはうなずいて、ビデオを起動させた。
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