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2020年2月4日(火)-1
「うそでしょ、マジでマスク売ってないじゃん」
行きつけのドラッグストアの売り場で思わず声が出た。
目の前にはいつもマスクがあるはずの棚。そこには値札とともに『マスクは売り切れました。入荷は未定です』の張り紙が……。
「マジかぁ~……どこもマスクがないってTwitterとかでも見ていたけど。都会だけの話かと思ってたわ」
我が家にも女性用の小さめマスクの箱があと一つあるだけだ。これから花粉もきつくなる時期だけに買い足そうと思ったらこのざま。うそでしょう?
「ちょっとほかの店も回ってみるか……」
ダメ元でそこを出て、市内のドラッグストアを回ってみる。行きつけの場所とはまた違う場所にあるウメキヨ、ヴェルシア、バツエドラッグ、我が栃木県に本社があるカマチ薬局……全部回ったが、そのすべてでマスクが売り切れている。
ある店舗で、買い物にきていたシニアのご婦人が店員を呼び止め「マスクはないんですかねぇ……」と困った様子で聞いていた。
店員のほうも申し訳なさそうに「ごめんなさい、売り切れなんです」と対応している。たぶんどこも似たような感じだろう。
(唯一、ちょっと大きめのカマチ薬局の入り口にだけ、箱のマスクが積み上がっていたけど……)
マスクの色がなぁ……黒、なんだよなぁ……。
黒のマスクって、そんな不良でもあるまいに……。
「ちょぉぉおっと手を出す勇気はないかなぁ……」
一応、家には自分のサイズのマスクが一箱あるし、わざわざ黒色に手を出す必要もない。
外出のときだけマスクを使うようにすれば……一度使っただけでは捨てないで、三日くらい使い回せば、なんとか……。
「でもファンデとかついているマスクを翌日も使うとか、いやだわ~……」
(はっ、それなら化粧しなければいいんじゃね?)
「――それはそれで顔の脂がべったりつくからいやだわ~!」
悩むあまり一人ボケ突っ込みをくり返してしまう。
悩んで悩んで、そのあいだに買い物客が同じように足を止め、売り場をスルーしたり、決死の覚悟で一箱持って行くのを見送って――結局わたしはスルーを選んだ。
「やっぱり黒のマスクをする勇気はないよー……」
結構わたしって外聞を気にするタイプだったのかな、と思いつつ、とりあえず鼻炎の薬と目薬を買いに行くのだった。
当面の敵は、新型ウイルスより花粉だろうと思えたので。
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