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審査員泣かせ
審査員は大いに頭を悩ませた。
常駐審査員である小納戸塁、阿賀作理咲は元より臨時審査員であり美術評論家の出雲大やコピーライターとイラストレーターの二つの顔を持つ糸井ブリトニーも意見の分かれるところであった。
小納戸「入鹿の作品は全体的にまとまっているものの知識偏重型というか、まぁ、それでも良いんだが1.3秒の意味が少し曖昧な気がするんだが」
出雲「小納戸さんは御子息に厳しいですな、気持ちは分かりますけど、私は新しいと思いますよ。たしかに光の速さでも1.3秒かかるわけですから今見てる月も1.3秒前と言う面白みを与えてくれてますから」
小納戸「いやいや、面白みはわかるとして意味がそこにないと」
糸井「意味深というとやっぱり、礼華が少し抜けている気がするんだけどね。とくに自分の価値をシュレッダーにかけたいというのは否定による自己肯定な気がするわけだけど」
小納戸「というと?」
糸井「つまり、シュレッダーしてもまだ余りある程の価値を求めてるという」
阿賀作「なるほど、そうなのかも知れないけども全体のバランスという意味では詩華さんがもっとも良いのでは?」
糸井「バランスは良いけど、月ってお題に対してかなり離れ技使ってる気もするんだけど、あと、最後のアレって長考なんじゃない?」
阿賀作「お題からやや離れがちではありましたけど、月夜全体の出来事として纏まってると思いますよ。あと最後のは長考という感じではなかったと思います」
糸井「なかったと言う根拠は?」
阿賀作「満天の桜というのはスッと出てこない筈はないと思うんですよ、つまり態とと考えた方が」
糸井「態と?態と風を待ったとか?まさか風を呼んだとか言わないでしょう?」
小納戸「そんな事はあり得ないと思うが、たしかにワシも自然な間だった様に感じたが」
糸井「減点されるかも知れないのに?」
阿賀作「そこまで考えてなかったのかも、流れの中で自然に出来てしまった間なのでは?」
糸井「……なるほどね」
出雲「どうしましょうか?私は入鹿君の良かったと思いますよ、反戦の趣旨も入ってる気がしますし」
小納戸「うーん、1.3秒がなければ」
糸井「私は礼華ちゃんかなぁ、詩華ちゃんも良いけどなんか、昔の人が歌ってる感じがするわよね」
小納戸「ふむ、たしかに憑依してる気すらするが」
阿賀作「そんな馬鹿なこと」
出雲「ないない」
ワハハと笑い合う審査員達だがまた頭を悩ますのだった。
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