壊れる日常

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壊れる日常

「…おはよう」 眠い目を擦りながらリビングへ行くと、キッチンで朝ご飯を作っている母と、朝食の皿を食洗器に入れる父の姿があった。 父は警察官をしている。 国家公務員Ⅰ種に合格した、キャリア組だとか。 役職は何度か聞いたことがあったが、忘れてしまった。 子供の頃にお父さんのお仕事について聞いてきましょう、みたいな課題が出された時に、具体的に仕事場に行って何をしているのか聞いたこともあるのだが、仕事柄言えないこともあるらしく 「職場に行ってパソコン起動させて、お茶をずずずっと飲んでる」 みたいな回答しか貰えなかったのを覚えている。 父はネクタイを締め、鞄を持つとテーブルに乗っているお弁当を鞄にしまう。 「じゃあ、行ってくるから」 父の言葉に私は「いってらっしゃーい」と適当に返事をして、母は玄関へと見送りに向かった。 適当にソファに座って、朝のニュース番組をぼんやりと眺めていると、玄関からパタパタと母が戻ってきた。 「もう朝ご飯出来てるんだから、早く食べちゃいなさい」 「はーい」 自分の分の朝食を母から受け取り、テーブルに着く。 朝食を半分ほど食べ終えた辺りで、弟の直樹(なおき)が冬眠明けの熊のように、背ばかりが高い大きな身体をゆらゆらとさせながら起きてきた。 ドスンとソファに勢いよく腰かけると、どんどんと顔が下を向いて行った。 その様子を見て、母が急かすように怒った。 寝起きはこんななのに、朝の身支度は20分足らずで済んでしまうのだから、本当に羨ましい。 直樹が朝食を食べ終える前に洗面所を占拠し、服に着替えて支度を整える。 上着を着てリュックの中身を確認する私を見て、母が「お姉ちゃん、お弁当忘れないでね」と念を押した。 それに「分かった」と返事をして、弁当箱をリュックの底に丁寧に入れた。 玄関まで見送りに来てくれた母と、靴を履き終えるまで他愛のない会話をする。 「今日お母さん夕方まで仕事だから、夕飯の準備よろしくね」 「あ、そっか。そういえばそんなこと昨日言ってたね」 「家の鍵は持った?」 「持ってるよ。じゃぁ、行ってきます」 「いってらっしゃい」
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